こんばんは、分散型ライフのエンジです。
金融工学で投資の期待収益とリスクを考える上で、よく耳にする言葉があります。
「分散・標準偏差・正規分布」ですね。
わかっているようでわからないという状態ではありませんか。
小生もよくわかっていなかったのでこの記事を契機に復習してみました。
ポートフォリオを組む上で考慮する、共分散や相関係数、回帰分析、マーケットモデルの推定につながる基礎知識となります。金融工学という側面で一歩踏み込みたい方にも参考になればと思います。
【関連】
収益率の不確実性について
まずは期待収益率について触れていきます。
証券や為替にしても、円高なると株価が下がり、円安になると株価が上がるというような収益率が一意に定まらずに、市況によって様々な値を取ります。つまり収益率は不確実性を伴っているということです。
例えば、10%の収益が得られる確率が40%、20%の収益が得られる確率が50%といった具合です。
この不確実な状況を表す方法として、分布型に当てはめるという考え方があります。
上記で言えば、収益率と確率を用いた確率分布で示す事で、ある収益率の起こる確率が何%であるかということを分布から把握することが出来ます。
つまり、将来の収益率は確率分布に従うと考えられます。
分散とは?
それでは前述の確率分布について掘り下げてみます。
債券のように経済の好況・不況によって変動が少ない安全資産と株式のように変動が激しい危険資産で分けて考えてみます。グラフで表すと下記のようなイメージです。
横軸が収益率、縦軸が確率となります。
安全資産の場合には景気の変動で左右されにくいため分布の散らばりが少なく、裾が狭い形となります。一方、危険資産では変動が大きいため分布の散らばりが多く、裾が広い形となります。
【安全資産の例】
【危険資産の例】
このように、分布の散らばりが多い(裾が広い)ほどリスクが高いと解釈出来ます。
では分布の散らばり程度をどのように表せばよいでしょうか。一般的に用いられるのは、収益率の平均値を算出し、平均値からの距離を2乗し、そこに確率を乗じて全て足し合わせる方法です。これを分散と呼びます。
いきなり平均値を出して、二乗して・・・ややこしくなりましたが1つ1つ見ていきます。
データの散らばりとは、平均値からどの程度離れているかということで考えることが出来ます。平均値から離れる程散らばっているということです。このため、平均値からの距離を用います。ちなみに平均値からの距離を偏差と呼びます。
次に2乗の意味です。直角三角形を思い浮かべて、三平方の定理(ピタゴラスの定理)を思い出してみて下さい。直角三角形の斜辺を求める際は二乗計算を行いますよね。つまり、平均値とデータの距離を二乗することで平均値からの距離を求めています。
最後に確率を掛けることで、収益率と確率の2つの要素を持つ確率分布に載せることが出来ます。
実際にデータの散らばりを評価する際には、後述する標準偏差を用います。
標準偏差とは?
分散はσ2で表し、平均値からの距離を二乗してますので、その平方根を取った値を標準偏差と呼びます。
なぜ√による平方根を取るのか。
製造設備による公差を思い浮かべて下さい。例えば、ドリルで板金に穴あけ加工を行う場合、製造設備によって穴径がばらつく場合があります。そのバラツキの分散を求める際に、平均穴径との差を二乗して算出します。すると、二乗することによって単位が[mm]→[mm2]となってしまうため、[mm]次元で比較が出来なくなってしまいます。このため、平方根を取ることによって[mm]に単位を戻しています。
このように、分布からリスクの尺度を得るためには、散らばり具合を評価する必要があります。それは分散の計算を行い、標準偏差を求めることで投資案件の比較をすることが可能となります。すなわち標準偏差で散らばり具合の評価を行います。
正規分布とは?
収益率を予想する際には、分布に従うということでしたが、分布にも様々な種類があります。
例えば、A証券という株式の分布を考える際に、どの分布型が当てはまるのか特定する必要があります。
そして分析する際には、分布の面積から確率を求めます。例として下図のように収益率1%~2%の間に収まる確率を求めるとします。その際に赤く塗りつぶした部分を積分によって面積を求めると確率を算出できます。しかし面積の算出には分布の関数が必要となるため、関数型がわかっている分布を用いないと分析出来ないことがわかります。
そこで予め関数型がわかっている正規分布を用います。
データの分析で最も用いられるのが正規分布です。正規分布とは上図のように釣鐘型の形を示します。正規分布は期待値と分散(あるいは標準偏差)の値だけで分布型を特定することが出来ます。利便性が高いことから、収益率の予測は正規分布を用いて検討されます。
ちなみに正規分布の確率密度関数は以下となります。(参考程度)
eは自然対数の底を示しています。
尚、実際に正規分布を用いて検討する際には正規分布に従う変数に変換する必要があります。
それを正規化と呼びますが、今回は詳細は割愛します。
まとめ
分散・標準偏差・正規分布についてお話していきました。
なぜ分散を計算する必要があるのか、なぜ正規分布を用いるのかという背景に着目して書いてみました。これらを用いて分散投資における相関係数の算出や回帰分析、マーケットモデルに応用することが出来ます。最終的には複数の証券で構成されるポートフォリオの期待収益率とリスク尺度を求める事が出来ます。
ぜひ以下の記事も参照してみて下さい。
今回の記事は以下の証券アナリストの数学入門を参考にさせて頂きました。投資の収益率やリスク、ポートフォリオの計算について勉強することが出来ます。株式投資や投資信託に応用出来ます。
以上、「分散・標準偏差・正規分布の意味をわかりやすく解説!」でした。