こんばんは、分散型ライフのエンジです。
株式投資では理論的に株価を算出することが出来ます。
フリーキャッシュフローを用いて利率を割引いて考えるDCF法、配当の成長率に着目した配当割引モデルがあります。
では為替レートにも株価と同じように決定理論があるのでしょうか。
決定理論として、為替の需給に着目することで様々な学説があります。主に購買力平価やアセットアプローチが挙げられます。ですが、為替の値動きを捉える理論ではなく、あくまでも為替需給を考慮する際の理論であることを念頭に置く必要があります。
購買力平価とは?
購買力平価とは、為替レート決定要因の1つであり、2国間の購買力の比率によって決定されるという説です。平たく言うと、2国間で同一商品が同価格となるように為替レートが決まることを指します。
例として、アメリカと日本の売店でトウモロコシが売られているとします。アメリカでは1個1ドル、日本では1個110円の場合、1ドル=110円とするのが購買力平価の考え方となります。
同様の考え方で、全世界に流通しているマクドナルドのビッグマックを指数としたビックマック購買力平価というものがあり、購買力を量る要因として用いられています。
つまり、購買力平価は貿易収支を均衡させる為替レートと考えられますが、現状では貿易収支よりも資本収支の方が大きいため、為替レートが購買力平価から大きく乖離することが多いです。米国と日本で1973年から現在に至るまで長期的に見ると、購買力平価は下落トレンドとなり、それに追従する形で為替レートも円高方向に推移しています。しかし短期的には20%以上円安に乖離しており、実際の為替取引では購買力平価を根拠にトレードするのはあまり参考にならないかもしれません。
歴史的にも1983年までは米国はドル高を容認していましたが、日米貿易摩擦が進行すると1985年のプラザ合意で円安是正に向けて強調介入が行われました。
このように、短期的には国の経済状況によって為替レートは変動するので予想は難しいということです。
また、購買力平価を考えると2000年代から新興国通貨の高金利通貨が買われている相場展開の説明が難しくなります。名目金利が高い通貨は高インフレとなり物価上昇で購買力が低下して通貨安となるからです。
インフレ率が高いと生産コストが上昇して、国際競争力が下がります。このため、経常収支が悪化して通貨安を招きます。
以上から、購買力平価ではなく、近年の資本収支の増加を鑑みて金利差や資産状況に着目したアセットアプローチ理論が主な為替レートの決定要因となり得るのではないかと考えられています。
アセットアプローチとは?
アセットアプローチとは、金融資産に対する需給の均衡から為替レートを決定するという考えに基づいた理論です。
基本的に投資家は最も収益性が高い資産に投資します。その判断は、金利、為替変動リスクなど様々な面からリスクを勘案して投資先を決定します。
そのような投資家の行動を踏まえて、アセットアプローチ理論では米国と日本でどのように為替が変動するか考えてみます。
米ドルの金利が3%で、円の金利が0.5%と仮定すると、投資家は金利が高い米ドルに投資するものと考えられます。
アセットアプローチ理論では、米ドル資産と円資産の期待収益率が一致するまで為替が変動するということです。
この場合だと円売りドル買い圧力が起こり、金利差である2.5%分、為替レートが円安方向に変動すると考えられます。
このように、金利のみ着目したアセットアプローチ理論のことを「金利平価説」といいます。
しかし、金利平価説では金利商品のみ対象であるため、実際は不動産や株式などの資産も踏まえないと為替レートの決定要因としては不完全です。
そこで投資家のポートフォリオに着目した「ポートフォリオ・バランス・アプローチ」があります。
ポートフォリオの一部に外貨建ての金融資産を含んでいる場合に、為替レートの変動による差損を埋め合わせるため、ポートフォリオの組み合わせを作ります。その際に為替レートがパラメータとなって、各種資産の需給が均衡するようにレートが決定されるというものです。
現在の国際収支における大部分は資本収支で構成されているため、金融資産に着目した分析は購買力平価よりも優位性があると考えられます。
アセットアプローチの問題点
アセットアプローチ理論は、資本収支に着目した有用性がある理論ですが、地政学リスクやカントリーリスクが考慮されていません。
昨今の英国EU離脱は、政治要因と欧州経済の不安から「地政学リスク」に該当しますし、トルコの軍事クーデターは「カントリーリスク」に該当します。
すなわち、アセットアプローチ理論は金利平価など理論的には理解しやすいですが、実際の為替レートには不透明なリスク要素を孕んでいるため、一概に予想するのは難しいといえます。
まとめ
為替の需給に着目することで、購買力平価やアセットアプローチ理論により中長期的に大まかな為替レートは予想出来るかもしれませんが、地政学リスクやカントリーリスクを要素付けすることは難しいため、需給の理論を理解した上で参考程度に留めておくのがベストだと思われます。
以上、「為替レート決定理論のアセットアプローチで為替予想は可能か?」でした。